第66章 しちゃうか〜結婚!
「春人くん、ごめん。少し離れるね。大丈夫?」
『大丈夫に決まってるでしょう。子供じゃないんですから。どうぞ気になさらず』
龍之介は笑顔で答えると、やや駆け足でこの場を離れた。その背中を視線だけで追ってみる。すると、他の参加者の元で足を止めた。どうやら、知り合いに挨拶をしているようだった。
「オレもちょっと話したい人いるから行ってくるな。いいか?」
『…どうして和泉さんまで私に許可を求めるんですか。好きにして下さいよ』
龍之介の過保護っぷりを見て、悪ノリしたのは明らかだった。ニシシ、と悪戯っ子のように笑うと 三月もこの場を後にした。
残った百が、じっと私を見つめている。そして、キラキラの笑顔を向けて告げる。
「オレは、ずっと君の側にいるよ!」
『いやいや貴方こそ挨拶回りをしなきゃいけない人では!?主催者でしょ!』
「あはは。痛いとこ突かれちゃいましたなー!でも大丈夫、ちゃんと後から回るから!
今は、もう少し春人ちゃんと話してたいんだ」
『…気を使わなくても良いんですよ』
「もー、違う違う。気なんか使ってないってば!
ただオレが、そうしたいだけ」
本人はこう言っているが、本心はどうか分からない。
隣から伝わってくる気配が、とても優しいから。
クラスに馴染めない転校生に、1番最初に話しかけてあげる子供みたいな。そんな優しい気遣いを無意識でやってのけるのが、この男の凄いところだ。
満足そうに隣で微笑む百と、私は笑顔を合わせた。