第64章 首を絞めたくなりました
「いただきます」
『ど、どうぞ』
とりあえずプレート盛りは避け、それぞれを小皿に盛り付けてみたが。
どうだろうか。お子様ランチだと、バレなければ良いが。
「今日のメニューは、なんだか豪勢だ」
『天がお仕事頑張ってくれてるからだよ』
「そう。ありがとう。
オムライスも、ハンバーグも海老フライも好きだよ」
天はナイフとフォークを手に取って、ハンバーグを切り分け始めた。
私はというと、密かに安堵の息を吐いていた。
よかった。どうやらカンの良い天にしては珍しく、気付かれなかったらしい。
「あとは、ここに国旗楊枝が刺さってたら完璧」
『……天は…どこの国の旗だとテンション上がる?』
「やっぱり日本じゃないの?」
しっかりとバレていた。
『いや、その…わざとじゃないよ?』
「知ってる。頑張って、ボクの好物を作ってくれたんでしょ」
天が海老フライにナイフを入れると、ザクと小気味良い音がした。そして、それは真っ二つになった。その様子を見下ろして、天は私に声を掛ける。
「がっかりした?」
『え?何に?
天の好きな国旗が日本だって事実に?』
「全く違う」
一口大に切り分けた海老フライを、フォークで刺した。でも天はそれを口には運ばずに言葉を続ける。
「キミは、ボクの為にこんなにも頑張ってくれてるでしょ。
最近は楽や龍より優先して、ボクに付きっ切りだし。忙しい合間を縫って、手の込んだ料理を作ってくれる。それに、同棲の相手まで買って出てくれた。
それなのにボクは、不甲斐ない姿を晒してる。
ねぇ…キミは、こんなボクを見てどう思った?普通、ガッカリするでしょう」
『TRIGGERの天才センター九条天の不甲斐ない姿を、1番近くから見られて超ラッキー!スーパーレア!』
「……あのさ。真面目に訊いてるんだけど」