第9章 抱いて差し上げましょうか?
「はっ。なんせコイツは、黒王子様 だからな。モテて当然なんだろ」
楽の言葉からは、有り有りと悪意が伝わって来る。
馬鹿にされたままでは癪なので、私はからかい返してやる事にした。
座った体勢の楽を見下げるように テーブルに手をついて。顔を近づけ、言い放つ。
『私の王子役をそこまで気に入って頂けて光栄ですね。そうですか、そんなに格好良かったですか…。ならいっそ、抱いて差し上げましょうか?』
「なっっ!!」
怒りからか恥ずかしさからか、カッと顔を赤くする楽。そんな彼を 天と龍之介は、珍しい物を見るかのように笑っている。
「あらアンタ達、まだいたの?相変わらず仲良しねぇ。でもちょうど良かったわ」
私達が帰り支度をしているタイミングで、姉鷺が部屋に入って来た。
その手には、本日発売の雑誌が握られていた。天は、姉鷺が持つその雑誌に視線をやりながら言った。
「ちょうど良かったって?」
「アンタ達、これまだ見てないでしょー?ふふ」
なんとも人をイラつかせる笑みを浮かべ、彼が差し出した物。それは、全ての女性の好奇心に応えるウィークリーマガジン “ 女性雑誌 inin ” だ。
世の女性達が、今 何に興味を示しているのかを知る事が出来る貴重な情報源。無論私も、後で読もうと 同じ物が鞄に入っている。
『私もまだ見ていないです』
「びっくりするわよぉ……じゃーーん!」
彼は、付箋が貼ってあったページを 勢い良く開ける。
そこに書かれていたのは……