第64章 首を絞めたくなりました
『すみません。うちのタレントのせいで、せっかくの彼女さんとのお約束、やはり遅刻ですかね』
「いっ、いや、そんな、」
『まぁ撮影現場は生き物ですから、終わり時間の予想を立てるのは難しいですものね。仕事終わりに約束をするならば、もっと余裕を持った時間に取り付けるべきだったかもしれません』
「お…仰る通りで」
『あぁ勿論、うちの九条が “ お子様 ” なのが全て悪いんですけどね。あっはは』
「滅相もありません!!」
『いや本当に、牧原さんと後藤さんにはご迷惑をおかけして』
「え…オ、オレ達の名前…」
「覚えて…」
『あはは。当然じゃないですか。私達は、共に同じ作品を作り上げる “ 仲間 ” ですよ?
そんな “ 仲間 ” の名前を知らないはず……ないじゃないですかぁ』
まずは【前菜】
これくらいで十分だろう。脂っこい “ 皮肉 ” をたっぷりとお見舞いしてやった。
お次は【メイン】と行こう。目眩が起こる程の鮮烈な “ 脅し ”
こちらも胃もたれが心配なくらいのボリュームで。
『そういえば…先日、高橋プロデューサーとゴルフをご一緒したんですよ。
確か彼は、お2人の直属の上司でいらっしゃいましたよね?』
「はい…」
「その通り…です」
『いやもう素晴らしいゴルフの腕前で、私は舌を巻きましたよ。真っ直ぐなロングショットが それは見事で…。まるで、彼の性格を表しているようなショットでしたね。
高橋プロデューサーは、ひた向きで、曲がった事が大嫌いで、卑怯で卑劣な人間が大嫌いな方でしたよね?
例えば…陰でこそこそと、人の悪口を言うようなタイプの人間が』
「ヒッ…」
「ご、ご内密に!さっきの言葉は、その、なんていうか!ちょっとした気の迷いと言いますか!!
土下座でも何でもしますので、どうか高橋さんにはご内密に!!」
『あっははは!冗談ですよ。言いませんって。
多分 』
最後の皿は【デザート】で決まりだろう。華麗にコースをフィニッシュさせるなら、やはりシンプルに限る。
そういうわけでラストは… ただの “ 暴言 ”
『イライラして “ 何か ” に怒りをぶつけたくなるのは理解が出来ます。
まぁただ…その “ 何か ” に、うちのアイドルを選んでしまったのが失策でしたねぇ。
うちの天を侮辱すんなよ、コラ』
