第63章 彼氏でしょ
並んでテレビモニタを見つめていると、真っ暗だったそこに文字が浮かび上がる。
“ TRIGGER ” と。
天は、すぐにリモコンに手を伸ばして一時停止ボタンを押した。
「待って。どうしてボク達のライブDVD?普通、こういうシチュエーションって選ぶのって恋愛もの一択じゃない?」
『あ、やっぱりそう思う?』
「……まぁ、いいけど」
『……』
(いいんだ)
天は再度リモコンを取り、動画を再生させた。
苦言を呈してから、まだ数秒しか経っていないというのに。天は至って真剣にテレビと向かい合った。口で言った程、不満は無いのかもしれない。熱のこもった瞳で、画面に映る自分を睨む天を見て そう感じた。
『2年くらい前のライブDVDな訳だけど…これを見て、何を感じる?』
「……自分の成長。
でも それ以上に感じるのは、もどかしさ。今の自分なら、こうするのに。もっと出来るのに。そんな気持ちを抱かざるを得ない」
『天らしいなぁ』
「キミは?」
『…演出、物足りないなぁ。って』
このライブは、私とTRIGGERが組んで初めてのもの。私が、彼らを思い手掛けた初めてのライブなわけだ。
私も、天と同じ気持ちだ。どうして、登場シーンをもっと派手にしなかったのか。ライトの色は、何故これを選んだのか。最適な曲順は果たしてこうなのか。
『拙い…とまでは言わないけど、胸を張って これがTRIGGERの最高のライブだ!とは、言えないかな』
「過去の自分の仕事を見てそう感じるなら、キミも成長したってことなんじゃない?」
『そうなのかもね。
でも、もっともっと…上に行きたいね』
「ボクも、そう思うよ」
『あはは。こうして天と勉強会やって こんな話してるのって、普段と何も変わりないね!』
「本当だよ。恋人らしさが皆無なんだけど。
実はキミも、同棲経験とか恋愛経験ないでしょ」
『失礼な!それなりにはあるよ。それなりには』
天の疑うような視線を受け、私は頬を膨らませた。