第63章 彼氏でしょ
「ごちそうさま。美味しかったよ」
『はい、お粗末様でしたー。とろふわオムライスも美味しいけど…』
「こういう、クラシックオムライスも良いよね」
私達は2人して、空になった皿に手を合わせた。
次の瞬間、天はすっと私の隣に自身を移動させた。そして、瞳に怪しげな光をたたえて囁く。
「それで?今日は、何をして過ごすの?」
『う、うん。どうしようか』
私達は、2人で過ごせる時間を活用して、様々な物事に興じてきた。
至近距離で見つめ合いながら愛について語り合ったり。互いの手を握ってスキンシップを図ってみたり。時には、意味もなく名前を呼び合ったりもした。
何故そんな事をするのか。理由はひとつだ。
天に、カップル同棲イチャラブライフを満喫してもらう為に他ならない。
『待ってね。いま調べる…』
私の携帯の画面を、隣にいる天が ひょいと覗く。そして 並ぶ検索履歴を読み上げ、明らかに馬鹿にした笑みを浮かべた。
「恋人_家_やること。恋人_何する。恋人_ラブラ」
『ちょっと!勝手に人の携帯を見てはいけません』
「ごめん。キミの検索履歴が、アホなワードで埋まっていくのが愉快で」
私はむすっとした顔を、遠慮する事なく隣に佇む男に向ける。
すると彼は、もう一度 ごめんと口にした。
気を取り直し、天に携帯画面を見せる。そこには、今日の題目が記されているのである。
『じゃあ、今日はこれ。
2人でソファに座りながら、ゆったりとDVD鑑賞!』
「分かった」
頷くと、天は静かに2人掛けソファに腰を下ろす。
私はデッキにDVDをセットしてから、彼の隣に移動した。