第63章 彼氏でしょ
「まぁ、頑張れよ。役作りする上で 相談があるならいくらでも乗ってやるし、アドバイスが必要なら俺も考えてみるから」
「じゃあ、質問してもいい?」
「おう。なんだ?」
「恋人じゃない女性と同棲して、同衾まで致す男の気持ちを教えてくれる?」
「あいにくだがな、そんな経験 俺にもねぇよ!」
カっと叫んだ楽。その隣で天はほくそ笑んだ。そんな彼を見て楽は、お前 分かってて言ってるだろ…と 憎らしげに呟くのだった。
「天!ねぇ、俺にも聞いてみてよ」
「え、まさか…龍に、そんな経験が」
「ううん、ないよ?全然ない!そんなのは」あは
「…じゃあなんで聞いてって言ったの」
「俺も、天に相談して欲しかったから…ごめん」
呆れる天の隣で、龍之介はシュンとしょげた。まるで飼い主に叱られた後の大型犬のようである。
『まぁとにかく。私も楽や龍と同様、出来る事があれば何でも協力しますので、役作り頑張って下さ』
「何でもって言った?」
『え?』
いま、間違いなく天の瞳がキラリと光った。絶対に見間違いではない。
『わ、私に…出来る事なら』
「じゃあ、今日からボクと同棲して」
「「はっ!?」」
『……それ、今回のドラマの役作りに必要な事なんです?』
「必要だから言ってるんだけど」
天の瞳は、至って真剣だった。私は、顎に手を当てて冷静に考える。
当人でない楽と龍之介の方が、酸欠の金魚みたいに口をパクパクさせていた。