第63章 彼氏でしょ
「えっと?
天馬は24歳か。天と結構違うなぁ」
「ま、そこは演技力でカバーだな」
「歳は置いておいて、口調はそう普段と懸け離れたものではないから、やり易いと思う」
このドラマは、年明けすぐに放送予定だ。世間は連休真っ只中。かなりの高視聴率が見込めるだろう。
題名は “ 愛してると言ってくれ ”
その粗筋を簡単に説明すると、こうだ。
ヒロインの、幼馴染である天馬。彼は、幼い頃から彼女に恋をしている。
ある日、意を決して告白をするのだが…。そこへ、主役の男が登場する。男もまた ヒロインに恋をしており、天馬の恋のライバルとして立ちはだかるのだ。
ヒロインは、2人の間で揺れ動く。どちらも自分にとって、大切な存在。なかなか決断を下す事が出来ない。
そんな中で、天馬は驚きの案を提示する。
1週間ずつ、お試しの恋人期間をそれぞれ設けてはどうか、と。
つまり、天馬とヒロイン。男とヒロインが、期間限定の恋人になるのだ。そして、その1週間は同棲生活を送る事となる。
実際に同じ屋根の下で時間を共有し、自分が本当に必要としている方を見定めてもらう。という流れだ。
「「ドロドロしてる…」」
台本を読み終えた楽と龍之介が、口を揃えて言った。しかし、普段自分達が演じている役と似通っている部分も多いはず。そのせいか、妙な既視感がある。と付け足した。
「女って、こういう展開好きだよな」
「この役を、天が演じるわけだよね…大丈夫?」
「問題ない」
「強いな、お前…」