第62章 俺は君にとって、ただの都合の良い男だったのか!
『ケーキって、この先っちょのトンガリの所が1番美味しいですよね。いただきます』
パクり。と、フォークの上に乗せた少量のケーキを口へと含む。瞬時に、彼女の表情がほわほわする。
しかし、俺達が凝視し過ぎていたのが気になった模様。エリは すぐに訝しむ表情に変わり、何ですか。とフォークを皿に置いた。
「幸せな時間を邪魔して悪いけど。これ、ボク達からのプレゼント。受け取って」
『!!』
「春人。いつもありがとう」
「これからも、よろしくね。俺達と一緒に頑張ってくれると嬉しいな!」
感謝の気持ちを添えて、それぞれのプレゼントを彼女に手渡した。
エリは数回の瞬きの後、それを受け取った。
『…ありがとう、ございます。プレゼントを用意してくれていたのにも驚きですが、3つもですか?
えっと、いま開けても?』
俺達が頷くと、彼女は箱にかかるリボンの端をつまむ。そして、しゅるりと引いた。
中身が3つともネクタイだと分かると、ふわりと微笑んだ。
『ふふ、バラエティに富んでいて素晴らしいですね。しかも全部、私の好きな色です。本当に…嬉しい。
ありがとうございます。大切にしますね』
箱に入るネクタイを3つ並べて、目を細めるエリ。その表情、声色、仕草から、彼女が心から喜んでいるのが伝わってくる。
これを選んでいる時は、自分の物を1番気に入って欲しいと強く思っていた。しかし この嬉しそうな表情を見ていると、そんな利己主義な思考は自然と薄れていった。
天と楽の2人も、俺と同じ気持ちなのだろう。優しい笑顔で、ただ彼女を見つめていた。