第62章 俺は君にとって、ただの都合の良い男だったのか!
『なんだか、この流れで出すのは恥ずかしいんですけど…
実は私も、今日という日に貴方達へ贈り物を用意していたんですよ』
言うとエリは、ポケットの中から小箱を3つ取り出した。大きさは一様だが、施されたリボンの色が違う。
淡いピンク色のリボンの物は天へ。グレーの物は楽。そして、俺には藍色のリボンがかけられた箱が手渡された。
俺達が贈ったネクタイと、各リボンのカラーが同じ。ただそれだけの事に、口端が上がってしまう。
「ありがとう。キミ1人に3つも用意させてごめんね」
『私も3つ貰ったじゃないですか』
「春人くん、ありがとう。中身はなんだろう!」
「この大きさ…まさか、指輪とかネックレスじゃねぇだろうな」
『男が男にそんな物を贈るはずがないでしょう』
俺と天は、若干俯いた。そして、百貨店でそれらを選ばなくて本当に良かったと密かに安堵する。
「だよな。良かった。あんたはまともで。
で、開けていいか?」
『どうぞ』
頷いた彼女を見て、俺達は同時にリボンを引く。
中身は…
ブローチだった。
銀細工で出来た楕円の台座に、ヘ音記号が刻まれている。天の物にはハ音記号。楽の物にはト音記号があった。
そして薔薇の装飾が2つ、控えめに施されている。その薔薇の上に、キラリと輝く藍色の石…
「格好良いブローチだ…!これ宝石!?もしかして、凄く高かったんじゃない?」
『小さい石なので、そうでもないですよ。
その宝石は、モンタナサファイアと言います。落ち着いた碧色が、どこか龍を思わせるでしょう?
宝石言葉は、心の成長。
龍は…TRIGGERの十龍之介として、どんどん心を強くして、成長して行きましたから。そんな貴方の心の成長を、近くで見守る事が出来た私は 幸せ者です。
ずっと、この石を龍に贈りたいと思っていました。どうか、受け取って下さい』
「っ…春人くん…!」
「なんだこれ。告白シーンでも見せられてんのか?俺達は」
「きっと彼に、そんな気は全くないよ」