第62章 俺は君にとって、ただの都合の良い男だったのか！

「でも実際、すき焼きにマロニーってかなり変わってると思うけど」

「だ、だよな！」

『そうなんですか？マロニーが美味しい汁を吸って、とてつもなく美味しくなるんですよ』


天の言葉に勇気をもらったのか、楽はマロニーの投入を渋り始める。


『マロニーも仲間に入れてあげて下さいよ。可哀想じゃないですか』

「可哀想？マロニーがか？」

『いえ。私の為にマロニーを下茹でしてくれた、龍が』

「準備したの龍かよ！」

「そうだよ。春人くんに、これ茹でてって言われたから。すき焼きにマロニー入れるんだーって、ちょっと驚いたけど」

「その時に言えよ…普通は入れねぇぞって」

「ねぇ。そうこう言ってる間に、センターにマロニーが大量投下されてるけど。鍋奉行的にはいいの？」

「あ！！おい！」


楽の叫びも虚しく。すき焼き鍋の中央には、グツグツと煮え始める大量の麺が…。
それを、嬉しそうなエリが眺めていた。
鍋の中の水分が、どんどんなくなっていく。


『楽、割り下の追加ありますか』

「ちょっと待ってろ…」


鍋を荒らされた楽は、悲しげに席を立った。そして、台所から追加の割り下を持ってくる。
そして、マロニー目掛けて大目にそれを入れた。

しかし。マロニーの吸水力を侮っていたらしい。新たに入れた割り下も、みるみる内に消えて行く。


『まだ、追加ってありますか？』

「クソ！！お前のマロニーが割り下をガンガン吸い尽くしていきやがる！」