第62章 俺は君にとって、ただの都合の良い男だったのか!
仕事を終えた俺達は事務所に戻り、そして楽の家へと向かった。その道中で、買い物を済ませる。
今日はお祝いだ。いつもよりも贅沢な食材を購入する事に、全員が賛同した。中でもメインである肉は、特に奮発した。なんと100gで2000円の国産黒毛和牛だ。
すき焼きの材料以外にも、有名な洋菓子店でホールケーキを購入。エリは、ここのケーキをずっと食べてみたかったのだと言ってご満悦だ。大切そうに自らケーキを持ち運ぶ。
そして、楽の家に到着したのだった。
「キミ、領収書切ってもらってたけど。もしかして経費で落とすつもり?」
『当然でしょう』
「春人くんなら、本当に全額通しちゃいそうだよね」
『ふふ。経理には仲の良いスタッフがいるんです』
「悪い顔してんなぁ」
楽は、エリの悪巧みを聞きつつ自分もニヤニヤと笑う。そして腕まくりをして、キッチンで手を洗う。
天は、買ってきた食材を袋から出しながら言う。
「社長に知れたら怒られるかも」
『あぁそれなら大丈夫ですよ。
親睦と慰労を兼ねた、TRIGGERの指揮を上げる為に必要な経費だ とでも言っておけば』
「それにしても、グラム2000円のお肉は…さすがにやり過ぎだ!って言われないかなぁ」
『TRIGGERのような一流のアイドルに、二流の物を食べさせる訳にはいかないでしょう。
なんて言う口実はどうです?』
「キミ、言い訳とか口実作るのとか病的に上手いよね」
『そうですか?意外と簡単に流されてくれる単純な社長のおかげだと思いますよ』
「おい。平気な顔して、子供の前で親の悪口言うなよ」全く腹は立たねぇけど
楽は、黒いエプロンを着けながら眉を顰めていた。