第8章 なんだか卑猥で良いね
『我が名はマレ…』
我が名はマレフィセント!と、思わず叫びそうになったが。違う違う。マレフィセントは魔女で。私は今は男の姿なわけで…。
『…マレ…、わ、我が名はマレウス!!。偉大なる魔女マレフィセント様の 1番の弟子である!!』
両手を広げ、作ったばかりの設定を説明口調で叫ぶ。
「お、王子様が2人になったのかと思ったわ」
「私も…。カッコ良い…」
「白い王子様と、黒い王子様ね!」
な、なんとなく観席の受けも良い…気がする!よし。このまま観客を味方に付けて押し通す!
私は左手でマントという名のカーテンをバサっと翻し、右手に持った剣で天に襲い掛かる。
『姫の眠りを覚ましたくば、私を倒していけ!!王子!』
「っ!邪魔を、するな!」
ギィインと、2人の剣がぶつかり合う。
私達が斬り合うすぐ奥には、城の頂上を模した背景と共に、ベットの上で姫が眠っている。
私と天は姫を避けながら、ステージの端から端までを使って殺陣を披露し続ける。
「アイツら、殺陣まで練習してたんだな」
「本格的だね。見応えがあるよ」
勿論、そんな物は練習していない。完全にアドリブと阿吽の呼吸。天と私のセンスによる賜物だ。
「くっ、ちょっとこれ、いつまでやるの?」
天は小声で私だけに囁く。
打ち合わせ無しの斬り合いだ。流石に神経を使う。私も彼も、額には汗が滲んでいた。
『もうそろそろ良いでしょう。
一度私は貴方から大きく距離を取ります。その時に、その剣を真っ直ぐ私に向かって投げて下さい』
小さく頷いた天。
すぐ様私は彼から距離を取る。
『流石だ王子!だがその程度では』
「マレウス!覚悟!」
天が、大袈裟に剣を振りかぶる。それが合図だった。もうすぐあの剣は、こちらに向かって飛んでくる。