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引き金をひいたのは【アイナナ夢】

第8章 なんだか卑猥で良いね




『…はぁ。言ってくれる』


天は、たった1人でステージに立つ。


「くっ、この茨の向こうに、姫が!」


剣を振り回し、茨を切り進んでいる。見事な機転だ。

たった1人で戦う彼を、まさかあのまま1人で放置するわけにはいかない。私も、そろそろ動かなくては。


「ぅ、…っ、私の、せいでっ」


ついには泣き出してしまった、マレフィセント役の女の子。私は彼女の頭についた、2本角の飾りを そっと取り。自分の頭に装着する。


「え?」

『泣かないで大丈夫ですよ。私が皆さんの大切なこの演劇を、失敗に終わらせたりはしません』

「で、でも…一体どうするんですか?プロデューサーさんが、マレフィセントの角を付けて…」


監督が、絶望の表情で私を見上げる。


『とりあえず、予備の剣を下さい』


するとすぐに、近くにいた男性が私の元にそれを持って来てくれる。


『衣装は…そうですね。これで良いでしょう』


私は近くにあった、陽の光を遮る為の黒いカーテンを体に纏う。


『少し埃っぽいですが、ぽっと出のピンチヒッターにはお似合いです』

「えっ、ピンチヒッターって、」


私にも、良い案があるわけではない。しかし、動かなければ何も始まらない。要は 出たとこ勝負。即興劇。アドリブで乗り切ってみせる!



「……なぁ、天の奴ずっと1人で茨切ってるぜ。合ってんのかあれ」

「も、もしかして、台詞飛んじゃったとか?」

「まさか。天に限ってそれはねえだろ」



私は大きく息を吸い込む。そして、段幕から叫ぶ。
声だけが、大きく舞台に響いた。


『…はっはっは!!よくここまで辿り着いたな!王子よ!』

「だ、誰だ!」


私の声に反応して、天も合わせてくる。

その声を合図に、私は勢い良く舞台へ飛び出した。


「…ほ、本当に誰だ!!」


頭にマレフィセントの角を付けた、謎の男に。天は多分 本心からそう叫んだ。


「おわ!春人!?」

「春人くんも出るんだ!ん?でも…あれは一体、何役だろう?」

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