第62章 俺は君にとって、ただの都合の良い男だったのか!
目の前で、エリの予定が埋まってしまうかもしれない。全く予想していなかった、まさかの事態だ。しかも、またとない絶好の社交場へのお誘いだ。これは、俺達が身を引くのが最善なのだろうか。
天と楽も、険しい顔をして考え込んでいる。もしかすると、俺と同じ葛藤を抱えているのかも。
「あっ、そうだ!よかったらさ、TRIGGERの3人も一緒に来ちゃいなよ?ねっ、ナイスアイデアでしょー?」
「………いや…すみません!その会食には、行けません!」
「えー!なんで!もしかして 楽、何か予定あるの?」
悩みに悩み抜いた結果、楽は両手を合わせて2人に謝罪した。しかし、欲しかった答えではなかったからか、百は頬を膨らませた。
そこへ、今度は天が口を開く。
どうやら楽と同じ方向へ舵を切る事を決めたらしい。
「行けないのはボク達だけではなくて、プロデューサーもです。せっかく声を掛けて頂いたのに 期待に添えず、すみません」
「えぇ!?春人ちゃんも!?うぅ…それは残念ですなぁ…」
「へぇ…天くん。君、先輩の誘いを断るんだ?」
千の目が、ゆらりと怪しく揺らめく。自分に向けられた訳ではないのに、背中からゾクリと寒くなった。
しかし、天は動じない。
「はい。すみません。またの機会に」
「いい度胸だな。またの機会なんてものが、やって来るといいけど?」
「べつに その機会とやらが巡って来なければ来なかったで、ボク達は困りませんが」
「ふふ、本当に君は楽しいね。愉快すぎて、軽く干してやりたくなるなぁ」
「ちょっ!?千さん!それは冗談っすよね!?」
「す、すみません すみません!!うちの天が愉快すぎてすみません!」
いま最も力のあるRe:valeから放たれた、干すという言葉の攻撃力。それは、楽や俺を狼狽させるのに十分過ぎた。