第62章 俺は君にとって、ただの都合の良い男だったのか!
見事な不発だった。自分の不甲斐なさに耐えられなかったのか、百は部屋の隅でうずくまる。そんな背中に、天が語り掛ける。
「百さん。ガチャには、物欲センサーという物が存在するらしいですよ。つまり、当てたいという気持ちが強ければ強いほど、欲する物は遠のく仕組みです」
「うぅ…天、一応は慰めてくれてるの?それ…」
『もう、いいんです。ありがとうございました、百さん。
私のような身分の者が、天下のRe:vale様のカードを手に入れようとすること自体が、おこがましかったんです』
「本人を目の前にして何言ってんだ?」
「た、たしかにカードどころの話じゃないよね…」
目の前に本物がいるというのに。しかも、明らかに2人ともエリの事を可愛がっているのに。
本人よりも、カードの方が貴重であるかのように言う彼女が可笑しかった。
ゲームの話題が一段落すること数分。誰からともなく、そろそろ自分達の楽屋へ戻ろうという雰囲気になる。
それを察した百が、エリに向き直る。
「あっ、そうそう春人ちゃん!話は変わるんだけどね!前に言ってた会食の席が用意出来そうなんだ」
『え、本当ですか。あの豪華著名人メンバーが一堂に会するんですか!凄いですね。以前 百さんから計画を聞いた時には、実現は無理だと思いましたけど…。さすがです』
「えっへん!オレ、頑張っちゃいました!」
一体どんな面子との食事会なのだろう。
どんな人が来るんですか?と質問しようとしたのだが、百は言葉を続けた。
「で、急なんだけど、それが今夜なんだよね。予定はどうかな?」
『今夜、ですか…』
「君が行くのなら、僕も顔を出そうかな」
「おぉっ!ユキがこういう場に付き合ってくれるなんて珍しいね!」
「まぁ、そうね。たまには良いかなと思って」