第62章 俺は君にとって、ただの都合の良い男だったのか!
『楽のスキルは初心者に優しい、判定領域拡大です』
「お、なんか良さそうじゃねぇか?」
『いやいや、代償が大き過ぎるんですよ。判定領域が拡大する代わりにスコアが下がるんです。勝手にいらん事せんといてーって感じですね』
「似非関西弁が、より腹立たしさを煽るな」
『スキルは全てオートで使用される為、編成に組む事も出来ません。TRIGGERで染めたかったのに。ガッカリです』
「ガッカリかよ」
編成を組めないと言う割に 彼女のメインデッキには、天と楽と俺が、しっかりと組み込まれていた。それだけの事が、なんだか嬉しい。
俺はゲームには疎いが、エリの好きな事なら もっと知りたいと思った。
「ねぇ、じゃあ俺のスキルは!?」
『龍のスキルは、8秒毎に50%の確率でスコアが1137UPするという便利なものですよ。おめでとうございます』
「ありがとう!」
おめでとうと言われると、反射でありがとうと答えてしまうのは何故だろう。
横にいた千が、俺達も気になっていた疑問を口にした。
「それで、僕と百は?そんなに凄いスキルを持ってるの?」
『たしかに、スキルも良いんですけどね…
それよりなにより、もう普通に能力値が高過ぎるんですよ。スキル無しでも強いとか、狡いですよ。
はぁ…。でもすが、もうさすがに課金するのも気が引けますし、諦めます』
「お前、課金までしてたのか。で?いくら課金したんだ?」
『……1000…』
「ふふ。なんだ、可愛い額じゃないか」
『ドル』
「11万円もイかれてるじゃんかっ!!」
笑っていた千も、さすがに凍り付いた。百も、あまりの額に声を大きくする。
俺達は、あまりに悲壮な彼女の背中を見つめる事しか出来なかった…