第62章 俺は君にとって、ただの都合の良い男だったのか!
お邪魔した、楽屋内。奥には、千とエリの姿が。
見たくなかった。彼女が、男の手を取るシーンなんて。それはまるで、何かの儀式のようで。見たくないはずのに、どうしてか目が離せない。
俺は…きっと楽も。もしかしたら天だって、叫び出したいのに声が出ない。
『では……行きます…っ!』
「いつでもどうぞ?」
エリは、取った千の手をスマホへと近付ける。すると千の人差し指が、トン と画面に当たった。
そのスマホを前に、彼女は祈るようなポーズで拝み出した。
目の前で何が行われているのか、見当も付かない俺達は、完全に怒るタイミングを逃してしまった。
ただ無言で、目の前で行われている謎の儀式を見守る。
百が、ぴょんと跳ねるように2人の元へ向かう。
「どうだったどうだった!?」
『………ゴミです』
「え。うそ。なんか、ごめんね」
『はぁぁ…御本人様なら、出ると思ったのに』
「僕の人差し指が役立たずなばかりに…」
「どんまいだよユキ!!」
ついに声を取り戻した俺が、3人の代表として口を開く。
「えっと…すみません、これは どういう…」
「「『ガチャ』」」
3人は、ぐるん こちらを向いて告げた。
どうやら、謎の儀式の正体は “ ガチャの儀式 ” だったらしい。
なんとなく察しのついた顔をしている天。対して俺と楽は、まだ頭が追いつかない。
「な、なんで呑気にゲームなんかしてんすか!!おい、春人!お前もだぞ!さっきまで散々 俺らの事を悪く言ってたくせに、あの会話からどういう流れでゲームに至るんだよ!」
『はい?どういう流れって…
私、ここに来てからずっとゲームの話しかしていませんでしたけど』