第61章 束縛強い男みたいになってねぇか?
思っていた通り、入り時間までは余裕を持って局へ到着。楽屋に荷物を置くなり、春人は足早に外へと出て行った。
それを見計らい、俺は2人に語り掛ける。
「これ、いつ渡す?やっぱり飯の時か」
「ねぇ。よく考えたらボク達、プロデューサーのこと誘ってないんじゃない?」
「そうだった!春人くん、接待とかの予定が入ってないと良いけど…」
「あぁ。早めにあいつの予定、押さえといた方がいいな」
店の予約は、春人の時間が確保出来てからする事にした。それにどうせなら、あいつの食べたい物を食わせてやりたい。
などと考えていた時。部屋にノックの音が響いた。
顔を覗かせたのは、今日の番組を担当するADだった。若い男は、今日はよろしくお願いしますと丁寧に頭を下げる。
俺達も、笑顔で挨拶を返す。
「すみません…少し早いんですけど、今ちょうどメイクルームが空いているので、先にメイクをお願いしても良いですか?」
「あぁ、全然 問題ないっすよ」
「はい!すぐに行きます」
「良かったです!では、お待ちしてます」
そういう訳なので、俺達は移動を始める。メイクルームは楽屋と同じ階にあるし、到着するのに さほど時間はかからなかった。
そこには、春人の姿があった。俺達のメイク担当のスタッフと、何やら談笑している。
咄嗟に、夜の食事会の事を伝えなければ と思ったが。わざわざ、こんな人が多いところで誘わなくても良いだろうと思い留まった。
メイクが終わって楽屋へ戻り次第、伝えれば良い。