第61章 束縛強い男みたいになってねぇか?
龍之介は、ベッタベタになったジュースを嬉しそうに啜る。その隣で、俺は春人に問い掛ける。
「たしかに俺らも悪かったと思うけど、お前…あの放送はねぇだろ」
「ボク達がTRIGGERだってバレて、騒ぎになる可能性もあったよね」
『どこの誰が、TRIGGERがデパートで迷子放送されると思うんですか』
「あっはは!確かに」
「龍は黙ってろ!
大体な、何で俺だけ親父の名前を使いやがった!」
『最大限の仕返しですけど』
「あはは!効果覿面だったよね。さすが春人くん」
「龍は黙ってて。
そもそも、あんなふざけた内容の放送。よく流してもらえたよ」
『女性の従業員さんが許可してくれました。まぁ、かなり丁重かつ真摯的に お願いはしましたけど』
「……はぁ。その様子が、目に浮かぶよ」
「ノリのいい従業員もいたもんだ」
長い間、雑談をしてしまった。いい加減に移動しようと春人は言う。
地面に溢れたジュースを片付けてから、俺達は車へと移動した。
まだ収録までには時間があるが、早く現場入りする分には何も問題はない。
再び春人の運転で、テレビ局へと向かう。
今日の収録は、生放送でもなければ歌う事もない。色々なVTRを見て、コメントを出すという仕事内容になっている。
ちなみに、出演者ゲストの欄にRe:valeの名前もあった。
「このジュース、凄く美味しいよ 春人くん。パイナップルの味が濃くて、フルーティで。塩の風味のおかげで飽きも来ないんだ」
「良かったね。龍のオーダー通りじゃない」
『私もさっき飲んだ時に思いました。甘じょっぱさが絶妙ですよね」
「へぇ。そんな美味いのか。俺にも一口くれよ」
「あっごめん!もう全部飲んじゃった…」
「……」
俺達を乗せた車は、テレビ局を目指して進む。