第61章 束縛強い男みたいになってねぇか?
俺達がそこへ到着すると、右手にジュースを持った春人が仁王立ちしていた。
俺と天は、龍之介の背中をぐいぐいと押して先陣を切らせる。龍之介には悪いが、俺達が何を言うよりも傷が浅くて済みそうだと思ったからだ。
「ちょ、2人とも!押さないで」
「大丈夫だ龍!お前ならやれる!」
「骨は拾ってあげるよ」
『………』
春人は、茶番を見るような目で俺達を捉えている。
意を決した龍之介が、口を開いた。
「春人くん…ご、ごめん!!」
『…良い度胸ですよねぇ。この私を撒くなんて。あっはは』
春人は笑いながら、グシャァと手にしていた透明のカップを握り潰した。中からは黄色い液体が飛び出し、半分ほどが失われた。
龍之介は引き攣った顔で、ポタポタと地面に垂れる液体を見つめている。
大きな背中に隠れていた俺と天も、さすがに前へと出る。
「悪かったって。ちょっとな、これには深い事情が…」
「ごめん。もう二度としないから」
『怒りで腹わたが煮え千切れるかと思いましたよ。あ、間違えました。怒りで、ではなく、心配で心配で。でした』
「嘘つけ」
「人って怒りで腹わたが煮え千切れるの?」
俺達が謝ると、春人の怒りも多少は和らいだようだ。すると、また龍之介が 果敢にも話しかけに行く。
「あ、春人くん。それ もしかして、俺の為に探して買って来てくれたやつ?」
『貴方が飲みたいと言ったんでしょう』
「そうだよね…ごめん。ありがとう。
何を見つけて来てくれたの?」
『沖縄産のパイナップルと塩を使ったジュースらしいですよ。フードコートのジュースバーで売ってました』
「もらってもいいかな」
龍之介が手を差し出すも、春人はそれを ひょいと躱す。そして自分でストローに口を付けた。
『嫌です。貴方達は、私の事いじめたので』
「俺達が春人くんをいじめる訳ないよ!でも、まぁ…そう思っちゃうよね…ごめん。
そのジュースは、春人くんが俺の為に一生懸命探して来てくれた物だろ?そう思ったら、凄く嬉しい…だから、出来れば俺が欲しいんだ。駄目…かな?」
『………仕方ないですね。でも、次はないですよ』
「!!
うん!ありがとう!」
「「……」」
(やっぱり龍に甘い…)