第61章 束縛強い男みたいになってねぇか?
デパート1階の正面玄関。自動で扉が開くと、女性ものの香水の匂いが俺達を包んだ。
今日は平日。土日よりも人は少ない。軽い変装をした俺達に気付く客は、今のところいない。
『で、何を買うんです?よければ手伝いますよ』
「その前に、トイレに行ってくる」
「あ、俺も…」
「ボクも」
『……3人で?なんだか今日は、随分と仲良しですね』
少し訝しんだ様子はあるものの、春人は俺達の後ろを付いて来た。
そして俺と天は、先にトイレに入る。中からこっそり、龍之介と春人の様子を伺った。
「あの…春人くん、ちょっとお願いがあるんだけど…」
『私に出来ることなら』
「飲み物を…買って来て欲しいんだけど!」
『それくらい、お安い御用で』
「甘くてフルーティで、でもしょっぱくて、どこか俺の故郷を思い出せるような冷たい飲み物が飲みたいんだ!!」
『何です、その勘違いした女優のワガママのような要求は。
……まぁ、探して来ますけど』
「うぅ…ごめんね、春人くん…」
トイレからその様子を見ていた俺と天。春人の姿が見えなくなったのを確認してから、龍之介と合流した。
「龍、上手くやったね。ナイスわがまま」
「だな。春人の奴、すっかり騙されてたぜ」
「その言い方やめてよ!罪悪感が凄い!」
ここからはスピード勝負だ。俺達には、デパートをゆっくり見て回る余裕などない。とっとと何を買うか決めないと。