第61章 束縛強い男みたいになってねぇか?
春人が運転する、社用車の後部座席。俺達はヒソヒソと作戦会議を行っていた。
「おい。どうすんだよ。本人も付いて来ちまってんじゃねぇか」
「仕方ないでしょ。あれ以上ごねたら不自然だったし」
「うーん…もう、サプライズプレゼントは諦めるしかないのかな」
弱気になる龍之介。その時、車が停止する。どうやら信号待ちらしい。
前に座る春人が、顔だけをこちらに向けた。
『で?どこに向かえば良いんですか?』
「そ、そうだな。とりあえず、909に頼む」
『了解』
春人が再び顔を前に向けたのを確認してから、俺は2人に考えを述べる。
「諦めるのはまだ早いと思うぞ。俺に作戦がある。2人とも、耳貸せ」
耳打ちした作戦は こうだ。
まずデパートに入ったらすぐ、3人でトイレに行くと申し出る。実際にトイレに入る前、龍之介が春人に飲み物を買って来て欲しいと頼む。
「えぇ!なんで俺!?」
「仕方ねぇだろ!あいつが1番甘い顔するのはお前なんだから」
「たしかに。龍が適任」
なるべく、無理難題を吹っかける。そしたら、春人は飲み物探しに時間を割かざるを得ないだろう。
その間に、俺達はこっそりトイレを抜け出して、買い物を済ませるのだ。
「うん。分かった!分かったけど…探すのに苦労する飲み物って?」
「そこは龍のアドリブで」
「そ、そんな…」
「頑張って。これもプロデューサーに喜んでもらう為だよ」
「……そうだな!頑張ってみるよ」
話がまとまったところで、春人が再び車を停止させる。今度は赤信号ではない。
909に到着したのだった。いよいよ、作戦の決行である。