第61章 束縛強い男みたいになってねぇか?
「お!それいいじゃねぇか。龍らしい」
「でも、何も用意してないんでしょ?渡すなら、今日じゃない?」
「そうなんだ…。レッスンの後はすぐに収録で 夜まで仕事だし、プレゼントを買いに行く時間がないよね」
「時間ならあるだろ」
うーんと唸っている龍之介に、しっかりと言い切る。
「今から買いに行こうぜ」
「そ、そっか!今から行けばいいんだ!収録まで、あと2時間くらいはあるもんね!」
「レッスンの時間がなくなるのは気になるけど、まぁ今回は仕方ないかな」
嫌味をこぼした天だったが、薄く笑っていた。
そうと決まれば、ここでグズグズしている時間が勿体ない。何を買うかは置いておいて、とりあえず出発した方が良いだろう。
俺達が3人で頷き合った時、春人が帰って来る。
『お待たせしました。レッスン再開しましょうか』
「えっとー…それなんだけど」
「ちょっと俺達、今から出ないといけなくなってな」
『出る?収録までは、まだ時間がありますよ』
「いや仕事じゃなくてね、その、何て言うか…」
「そうだ、野暮用だ。野暮用」
『??』
何とか外に出る口実を作ろうと、俺と龍之介は言葉を並べてみる。しかし、春人はただ首を傾げた。
そこへ、有無を言わさぬ天の一言。
「どうしても必要な物が出来て、買いに行くからキミは待ってて」
『はぁ、それって急ぎなんですか?言って貰えれば私が代わりに買って来ますけど』
「大丈夫。ボクらが行かなきゃ意味ないから」
『そうですか…分かりました。でもそれなら、もう少し早く言って下さいよ。ついさっきジャージに着替え直したところだったのに』
どうやら春人は、自分も行く気満々の様子だ。天が交渉を続ける。
「いや、ボク達だけで大丈夫だからキミは待」
『どこへ行くのか知りませんが、私も行きます。オフならまだしも、貴方達を放ったらかしには出来ませんから』
俺達は、顔を見合わせた。天が、ゆるゆると首を左右に振る。
どうやらここは、妥協する他ないようだ。