第61章 束縛強い男みたいになってねぇか?
もういい。これ以上はいい。このまま話していると、エリにフラれた傷が痛み出してしまう恐れがある。というか、既に胸がジクジクと痛い。
俺は強引に話を変える。
「そういや、俺すげぇ事に気が付いたんだよ」
「へぇ!凄い事って何だろう」
「楽の事だから、どうせそんなに凄くないんでしょ」
「相っ変わらず可愛くねぇな、お前は」
「キミに可愛いなんて思われたくない」
「ちょっと2人とも!喧嘩しないで!」
天も龍之介も、すっかり通常運転だ。俺は密かに安堵して、言葉を続ける。
「春人がうちに来て、今日でちょうど2年だ!」
「うん」
「そうだね!」
2人の反応の小ささに、俺の方が驚かされる。
「気付いてたのか?」
「まぁね」
「俺も気付いてたよ。っていうより、実は何日か前からずっと考えてた」
「龍は、先週からずっとそわそわしてたよね」
「う…バレてたんだ。なんだか恥ずかしいなぁ」
気付いていたのは自分だけだと思っていた。なんとなく優越感に浸っていたのだが、実はそうでなかったと知って少しガッカリだ。
「で?何かするの?」
「あ、いや。べつにそこまでは考えてなかったな」
「去年の1年記念日は、春人くんが俺達にご馳走してくれたよね。今年は、俺達が何か用意したいなって思ってたんだけど…」
「良いアイデアが浮かばなかった と」
龍之介が、春人を祝いたいというのは自然な流れのように思えた。しかし、天が乗り気なのは驚いた。こういうイベント事は敬遠しがちな男だと思っていたのだが。
「じゃあ、とりあえず今日の夜に飯でも行くか」
「いいんじゃない?」
「あ、あとさ!プレゼントとかもあげたいと思ってるんだけど、どうかな!?」
龍之介は、キラッキラの瞳をこちらに向けて言った。