第61章 束縛強い男みたいになってねぇか?
「べつに、Lioを忘れられた訳じゃない。あいつは、今も変わらず俺の憧れで、好きな女だ。
でも、それと同じくらい…惹かれる人が現れた。
こんな俺を、お前らはどう思う?やっぱり最低だって思うか?」
すらすらと言葉が出て来て、自分でも驚いた。もしかすると俺は、ずっと誰かに話を聞いて欲しかったのかもしれない。
たとえ、天や龍之介に軽蔑されても。叱咤されても、構わない。信頼の置ける2人に 本心を曝け出す事で、少しだけ気持ちが軽くなった。
「最低だなんて思わない」
「天…」
「べつに、いいんじゃない?想うだけなら自由だしね。
もし仮に、2人と同時に付き合う。とか言い出したその時は、キミがお望みの 最低って言葉をあげる」
「俺も、楽の事をそんなふうに思えないよ。無理してLioを忘れる必要も、ないと思う。
今は、心の中に2人の女性がいるとしても。きっといつか、分かる日が来るよ。
Lioか、その人か。どちらの女性が楽にとって、本当に大切な人なのか」
「龍も…ありがとう」
俺が礼を言うと、龍之介は微笑んだ。天は、しらっと自主練に戻ったが。
2人には、話さない。実はもうフラれた事も、会う手段が俺には無いことも。もし話してしまえば、またこいつらに 悲しい思いをさせてしまうからだ。
こいつらは、知らなくてもいい。俺がまた、望みの薄い恋愛をしていること。
「でも、楽の好きな人かぁ。今度はどんな人なのか気になるな!」
「Lioと並ぶ人でしょ。歌、上手いの?」
「さぁな」
知らないものは、答えようがない。
「あっ!もしかして同業者の人とか?」
「多分 違う」
そういえば、話した事がなかった。
「いくつの人?」
「同じくらいか…ちょっと上かもな」
エリの年齢も知らない事に気が付いた。
「えーっと…どこに、住んでる とかは」
「全く知らねぇんだよ」
これに関しては、ハッキリはぐらかされている。
天と龍之介は、哀れみの目をこちらに向けた。俺は焦って、なけなしの情報を2人にぶつける。
「そ、そういえば…ちょっと春人の奴に似てるぜ!」
「「え……」」
俺が告げると、2人は神妙な顔付きで目を伏せた。