第61章 束縛強い男みたいになってねぇか?
練習を開始して、1時間ほどが経過しただろうか。レッスンが始まってから、初めてフロアに腰を下ろした。
上がった息を落ち着けながら、春人からドリンクを受け取る。
「はぁっ…は…、ちょっとずつ、型ちにはなってきたか」
「楽は、ターンが綺麗だよね!天は、ボディウェーブが上手いし!」
「でも、やっぱり龍が頭ひとつ抜け出てるかな。あくまでダンスは。だけど」
練習中でも、天の負けず嫌い根性が顔を出す。まぁ、悔しい気持ちなのは俺も同じなのだが。
「そうかな…2人とそう変わらないと思うけど」
『たとえ同じ振りを踊ったとしても、龍が1番 苦労なく熟せるんですよ。何故、そんな芸当が可能なのかというと…やっぱり、腹筋です。
腹の筋肉がしっかりある龍は、バランスを崩しにくいんですよ』
「腹筋が、軸を安定させる」
『天の言った通りです』
「腹筋うんぬん言い出したら、俺と天は絶対 龍に敵わないじゃねぇか!」
こめかみを流れる汗を拭いながら言うと、春人はケロリと言ってのける。
『じゃあ付けて下さい。腹筋』
「ボク、なかなか筋肉って付かないんだよね…」
『天は、ほどほどで。TRIGGERが全員ムッキムキになったらファン層が変わりそうです』
「俺は割と付く方だけど、さすがに龍ほどじゃねぇよ」
「はは!今度、皆んなで筋トレしてみる?」
心の底から楽しそうに笑っている龍之介。その隣で、春人は悲し気に呟く。
『私も、もっと体幹が欲しいと思ってたんです。実は、さっき楽と天が躓いたところ、私も龍ほど上手く踊れないんですよ。
……私も…腹筋、バキバキ目指そうかな』
「「やめて」」
自分の腹を両手でさする春人に、天と龍之介は懇願するように言った。