第8章 なんだか卑猥で良いね
眠り姫の物語の粗筋を、簡単にさらっておくと。
ある小国に生まれたお姫様が、魔女マレフィセントに呪いをかけられてしまう。
16歳の誕生日に、姫はその呪いのせいで長い長い眠りについてしまうのだ。
そんな姫を助ける為、王子がドラゴンに扮したマレフィセントに勝利し、真実の愛が込められた口付けを落とす。
そして無事に目覚めたお姫様と王子様は、いつまでも2人で幸せに暮らしましたとさ。
そんな、有名な童話である。
演者も全員、衣装に身を包み。いよいよもうすぐ幕が上がる。
監督が皆んなを集め、最後の檄を飛ばす。
「いよいよ本番。皆んな、今までついてきてくれて本当にありがとう!
ちょっとトラブルもあって、公演自体が危うくもなっちゃったけど…。
まるで運命みたいに、九条さんが現れてくれた!きっと、神様が この公演を成功に導こうとしてくれてるんだと思う!
皆んな…最後まで、最高に楽しんで来てね!」
口コミで、TRIGGERの九条天が特別ゲストとして公演に参加すると広がって。体育館は見事に満員になっていた。
おそらくこの中に、楽と龍之介も観に来てくれているだろう。
私は、袖の方から天を見守る。
そして、いよいよ幕が上がり。順調にストーリーは進んでいく。
子供だったお姫様も成長して、いよいよ16歳の誕生日を迎える。そしてこの日に、王子様と再会するのだ。
そう。ついに、九条天の出番である!
天がステージに上がると、観客からは歓声と拍手が起こる。
「が、楽!天だよ、天が王子様だ!」
「っく、…白タイツ、カボチャパンツっ…っ!!多分アイツ、世界で一番似合うなっ」
「ああそうだ!ムービー撮らなきゃ!」
「やめとけよ。龍は天のオカンか!後で怒られるぞ」