第8章 なんだか卑猥で良いね
救済者の如く、突然舞い降りた王子様に。意気消沈だった演者達は大いに沸いた。
天は早速、台本の読みに入っている。
「す、凄い 監督っ…!まさかこの短時間で、本当に代役の方を見つけてくるなんてっ」
「まさに、運命の出会いだったわ…!」
さきほどの監督と、演者であろう女の子が話をしている。そして、演者の子が私に向かって 祈るように手を合わせる。
「ありがとうございます…っ、それにしても金髪に碧眼なんて…本物の王子様みたいっ…」
キラキラした瞳を向けて貰って申し訳ないのだが、代打は私ではない。
『褒めて頂いて光栄なのですが、代役は私ではなく彼ですよ』
私が言うと、彼女は え?と言って、天の方を見る。
「あ、あれ…私あの人どこかで…」
「そうなのよ!まさかのTRIGGERの九条天様!思わぬところで天からの拾い物…!これで今年の公演は満席御礼間違いなしよ!」ぐふふ
この下卑た笑いを浮かべている女の子と、さきほど涙を浮かべていた彼女が同一人物とは。にわかには信じがたい…。
可哀想に、すぐ近くで本当の王子役の男の子が半泣きになっているではないか。
天は、真剣に台本と向き合っている。私もこうしてはいられない。早くこの事を楽と龍之介に知らせなくては!
我等が天の、青春の晴れ舞台である。
それから、30分足らずで台本の暗記を終えた。そして衣装合わせ。元々の王子役の男の子と天の身長が近いのもあり、簡単な直しだけで済みそうだ。
『…貴方はおそらく、世界で一番白タイツとカボチャパンツが似合いますよ。惚れそうです』
「ああそう、それは良かった」
衣装の手直しで、彼の足元にしゃがんでいる私を、天はゲシゲシと足蹴にする。
『あいたた、ちょっと九条さん。針を持っているから危ないですよ』
「あの方は、マネージャーさんかしら…?」
「分からないけど、仲が良いわねぇ」ほほえま