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引き金をひいたのは【アイナナ夢】

第60章 面倒な男に惚れられたと思って、諦めてくれ




『私、好きな人がいるの』

「!!」

『だから、ごめん。楽の気持ちには応えられない』


咄嗟に出た言葉が、これだった。この言葉で、楽はどれくらい傷付くのだろう。どんな顔をして私を見ているのだろう。
そう考えると、上を向く決心が付かなかった。


「そうか…あんた、好きな男がいるのか」

『…う、うん』

「じゃあ、連絡先を教えてくれ」

『へ?だ、誰の?』

「エリのに決まってる」

『な…何で?』

「毎日、メッセ送る。電話もする。あとデートにも誘う。それで、俺の事をもっとエリに知ってもらう」

『……』

「あんたに、俺を選んでもらう為にな」

『えっ、と。それで私が…、いま好きな人より、楽を好きになるって?それ、本気で思ってるの?』

「あぁ。本気で努力するよ」


当然のように言い放つ楽を見上げて、私はポカンと口を開ける。空いた口が塞がらないとはこの事だ。
この男は、微塵も疑っていない。私が自分の事を選ぶと。


『…ふふ、あっはは!』

「なっ、何で笑うんだ!」

『ははっ、いやだって!前向き過ぎるよ楽は!普通、フラれた瞬間からそんな前向きになれる?!ふふ、変だよ、楽は…』


楽は…好き過ぎるよ。私のことが。

そんな貴方の気持ちが重過ぎて、涙が 出て来てしまいそう。


「……エリ?」


楽が名前を呼んだ ちょうどその時。エレベーターがこの階に停止する音がした。
私は、その音がした方へと歩き出す。

終わったのだ。泡沫の夢が。

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