第60章 面倒な男に惚れられたと思って、諦めてくれ
22人の個性豊かなキャラクター達が、天井や壁などに配置されている。
楽しげに指を差して、そのキャラクターの性格や好きな所について解説する。頼まれてもいないにベラベラと話す私にも、呆れる顔ひとつせず 彼は聞いてくれた。
そして、とあるキャラクターを見つけて楽が立ち止まる。
「お、あのキャラは俺も知ってる」
『えっ、どれどれ?』
楽が見つめる人形を見て、私は納得した。
そう。あのキャラは、以前 デートの時に楽がクレーンゲームで獲得してくれたぬいぐるみだった。
「エリの推しキャラだったよな、あの双子」
『凄い!よく覚えてくれてたね』
「覚えてたっていうか、俺の家にいるからな」
『そうそう!私、忘れて帰っちゃったんだ。なかなか、返してもらうタイミングが…なくて…』
言いながら、余計な言葉を口走ってしまった。そう思った。
楽が、真剣な瞳をこちらに向けている事に気付いたから。
「…俺の家、来るか?今から」
『……え、っと』
「来いよ」
『ごめん…行かない』
「まぁ…そうだよな」
いけない流れだ。早く、話題を変えなければ。私の胸が、ザワザワする。これから楽が発する言葉を聞いてはいけない。
楽の瞳が、覚悟の色を孕んだ。それに気付いた私は、逃げるみたいに足を前に向ける。
しかし。そうはさせまいと、彼は私の腕を掴んだ。そして自分の方へと引き、強引に体を向かい合わせる。
「逃げるなよ」
『……楽、放して』
「話が終わってから放す」
『…待って』
「もうエリも気付いてると思うけど、俺の気持ち。どうしても聞いて欲しい」