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引き金をひいたのは【アイナナ夢】

第60章 面倒な男に惚れられたと思って、諦めてくれ




「エレベーターの中から外が見えるのって、ワクワクするよな。ほら、エリも見てみろよ。どんどん周りの建物が小さく……って、おい!どうした?!」

『僕を信じて僕を信じて僕を信じて』


天井に描かれたキャラクターを凝視して、ただひたすら念仏のように唱える。
ちなみにこの台詞は、魔法の絨毯に乗るのを躊躇したヒロインに、キャラが告げた有名な台詞である。


「…エリもしかして…高いところが、怖いのか?」

「え…っと、どうされますか?一旦降りた方が、良いですかね?」

『っ、いや…このまま行って下さい 大丈夫です!っていうか、外が見えるエレベーターが頂上よりも遥かに怖いんです!急いで上に向かって下さい』


無茶を言っている自覚などは、ない。とにかく私は一刻も早く、この外の景色が見える動く箱から降りたかった。そもそも誰だ。こんな異常な乗り物を開発した奴は。わざわざ壁の一面をスケルトンにする意味が分からない。

あぁ、耳がキンキンと唸る。これ以上は高い所に行くなと、身体が異常を訴えているようだ。

ぎゅっと握り込んでいた拳を、楽の手が そっと包み込んでくれる。驚いて隣を見ると、彼が優しく微笑みかけていた。

…恐怖に震えていた心が、少し落ち着く心地がした。



「では、30分ほどしたら迎えに上がりますので。どうぞゆっくり観て下さいね」


フロアの電気を全て点けてから男は告げる。そして、私と楽を頂上に残して 再びエレベーターに乗り込んだ。

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