第60章 面倒な男に惚れられたと思って、諦めてくれ
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ソライロタワー。日本一の高さを誇るここなら、存分に夜景を楽しめるだろう。
しかし私達は、中に入る事も許されず途方に暮れていた。その理由は…
「嘘だろ、よりによって今日かよ…」
『明日から開催のイベント準備の為、本日は終日 臨時休業とさせて頂きます。
だって。うーん、ついてない!っていうか、もってない?』
「っかしーな…俺は、もってる男のはずなのに」
『ははっ。ま、そういう日もあるよ。日本一の高さじゃなくても全然いいじゃない!日本一は高過ぎるよ。うん』
「そうか?どうせだったら1番がいいだろ?」
『うーん、場合によるかなぁ』
私は携帯を開き、他の場所で夜景が臨めそうな場所を検索する。しかし楽は、まだ諦め切れない様子だ。じっと、ソライロタワーの入り口を睨み付けている。
そんなふうに見つめていたって、何かが変わる訳ではないのに。私は薄く笑って、再び液晶に視線を落とした。
良さげな候補を見つけた時、隣に立つ楽が あっ。と声を出した。
何かを見つけたような声に、私は顔を上げる。そして楽の視線の先を辿る。そこは、ソライロタワーの入り口だった。
入り口からゾロゾロと、作業着姿の男達が出て来たのだ。ハシゴを持ち、ヘルメットをしている辺りを見ると、外部の設営スタッフだろうと予測が立つ。
そんな彼らを、スーツを着た男性が見送っている。
「ちょっと行ってくる」
『えっ、ちょっと楽!』
楽は、スーツの男性が頭を上げるのを待ち、楽は声を掛ける。
「こんばんは。ソライロタワーの関係者の方ですか?」
「あ、あぁ、どうもこんばんは。
はい。私はここの責任者の……って、えぇ!?TRIGGERの八乙女楽さんじゃないですか!?」
「はい!どうも はじめまして」
楽はマスクをずらして、にこっと笑った。