第59章 凄く綺麗ですね!
もう、いい。こんなふうに真綿で首を絞めるくらいなら、もういっそ、組紐で一思いに絞め殺してくれ。
「おい、エリ。あんたからも何か言ってくれ。まさかとは思うが…な、七瀬と付き合ってるのか?」
「リク!!このレディは、アナタのステディなのです!?答えて下さいリク!」
『……』
「!!」
祈る事をやめ、顔を下げた私。それを見た陸は、何かに気付いたように瞳を揺らがせた。
そして。私の予想もしていなかった言葉が、彼の口から飛び出す。
「ご…ごめんなさいっ!全部、オレの勘違いでした!!」
『…え』
「どんな盛大な勘違いだよ!!」
「リク?どういうことですか?」
「えっと…その…今のは全部、オレが見た夢の話で…。エリさん、とは今日が初対面です!間違えちゃって ごめんなさい!!」
ばっと頭を下げた陸。私は、驚きのあまり また固まってしまう。早く、頭を上げさせなければ。
彼は何も間違っていないのに。何も悪くないのに、私の為に頭を下げているのだ。こんなのは、駄目だ。
陸は、下げた頭を少しだけ持ち上げて、上目遣いで私を見る。その目は、これで合ってる?大丈夫?と 語り掛けているようだった。
私はすぐに陸の前へ歩み出る。そして肩を持ち上げて、正しい姿勢へと戻した。
それから彼の目をしっかりと見て、告げる。
『…ありがとう。はじめまして。七瀬、陸さん』
「あっ…!は、はじめまして!中崎エリさん」
私が言うと、陸の顔はみるみる晴れやかになっていった。
陸は、私が困っているのを見抜いたのだろう。表情や仕草を見て、気付いてくれたのだ。春人と私を、繋げるべきでない事を。
そして、自分は悪くないのに頭を下げた。
あぁ。なんて…天使みたいな男の子なんだろう。