第59章 凄く綺麗ですね!
白とピンクが交互に並んだオーニング。なんともメルヘンチックな色使いのクレープ屋には、沢山の種類のサンプルが並んでいた。
私は、そのサンプル達が収められたショーケースの前で唸る。
「これだけ種類があったら、悩むよな」
『悩む。これは悩むよ…!
楽はもう決まったの?』
「いや。エリは、どれとどれで迷ってるんだ?」
『苺ショートケーキ入りの奴か、苺とバニラアイスが入ってる奴。なんとか、この2択までは絞ったんだけど…』
「分かった」
『え?』
楽はスタスタと、カウンターへと向かう。そして中に立っている女性に、なんと注文を始めたのだ。
「この、苺ショートのと…あと、苺とアイスのやつで」
「かしこまりました!すぐにお作り致しますので、横にずれて、お待ち下さいませ」
運良く他に客がいなかったので、すぐに出来上がるとのことだった。
『え?2つ共頼んじゃったの?』
「1つは俺の。シェアしたら、エリが食いたい奴が両方食えるだろ?」
『が、楽…』
いやいや。食えるだろ?ではなく…。
「エリも苺好きなのか。俺も好きだぜ?奇遇だな!」
『あ、うん。そうだね…』
どうしてそんなふうに、キラキラと笑っていられるのだ。どうしてそこまで、楽しそうに笑っていられる?
クレープが楽しみな訳でもあるまいに…
「エリはどっちがいい?」
『じゃあ、ショートケーキの方で』
「ん」
『ありがとう』
クレープを食べるには、マスクを外さなくてはいけない。私達は、少しでも人の少ない裏路地へと移動する。
「なんか、悪いな。気を遣わせて。もっと明るくて広い所で食いたいだろ」
『大丈夫。べつに嫌じゃないよ。そういう所に行きたいと思ってたら、最初からアイドルをデート相手には選びませーん』
「はは。そうか、ありがとうな。そう言ってもらえたら、救われる気がする」