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引き金をひいたのは【アイナナ夢】

第59章 凄く綺麗ですね!




「意外と乗れるもんだな!勝手に体が動く感じだ」

『自転車って、乗り方忘れないよね。不思議』

「だな。寒くないか?」

『ありがとう。平気』


自転車に乗っている私達を、風が通り抜けていく。1人だったら、もしかして寒いと感じたかもしれない。しかし 私がしがみ付いている楽の体は、とても温かかった。


「エリは、よく乗るのか?これ」

『あはは。乗らないよ。私も最後に乗った記憶なんて…』


楽に言われて、記憶が蘇った。
そうだ。最後に自転車に乗った時も、私は荷台に腰を下ろしていた。


『高校生の時、かな』

「…その時は、1人で乗ってたのか?それとも今みたいに…2人乗りだった?」


瞼を下ろせば、鮮明に蘇る。不安定な荷台の上で、必死にバランスを取る自分。そして 必死にペダルを漕ぐ、学ラン姿の彼の背中。その体は、やはりとても温かくて。私は密かに、その体に腕を回すのを楽しみにしていた。


『どうかな。忘れちゃったよ』

「…そうか」


こんなのは、楽の聞きたくない話題だろう。そう思うのは、私のエゴだろうか。
頭を軽く振って、思い浮かべた万理の背中を打ち消した。


『わ、私が高校生の時は、今ほど警察もうるさくなかったよね!2人乗りくらい見逃してくれたのに!』

「そう言えば、そうだったな。時代って奴か」

『そうそう。でも楽は安心して運転に専念していいからね?私が遠くにいる警察も見つけてあげる!しっかり目を光らせておくから』

「ははっ、エリは頼もしいな」


せっかくのデートだ。警察の検問に邪魔される訳にはいかない。まぁ…邪魔されたくなければ、2人乗りなどしなければ良いのだが。

しかし、デートっぽいイベントを無事に楽しむ事が出来た。
いよいよ、目的のクレープ屋さんが見えてくる。

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