第59章 凄く綺麗ですね!
『ご、ごめん』
「エリが謝る事ない。俺が勝手に、嫌だって思っちまっただけだから」
ふいに私達の間に気不味い空気が流れる。そんな雰囲気を変えようと、私はワザとらしく明るい声など出してみる。
『ねっ、じゃあこれからどうする!?どこ行く何する?』
「エリのデートのイメージってどんなだ?」
『うーん。そうだな…
クレープ食べて、映画見て、買いもしないサングラス試着しまくって、最後は夜景とか?』
「ははっ!具体的だな。すげぇ楽しそう。今言ったの 全部やろうぜ」
私達は時間を惜しむように、街へと繰り出した。
「まずはクレープだったか」
『歩いても良いけど、少し距離があるよね』
「あぁ…俺が車で来てたら何の問題もなかったんだけどな」
ここから1番近いクレープ屋さんは、徒歩で20分くらい。歩きで向かっても良いのだが、全てのスケジュールをこなすにはタイムロスだろうか。
楽もそう考えたのか、タクシーを停める為に車道へ目をやる。
『うーん…タクシーか。なんか、デートっぽくない』
「そうか?そういえば、エリは何でここまで来たんだ?」
『私はバイ……あ、歩き』
危ない。思わずツルっと本当の事を口走ってしまいそうになった。
不意に視線を横に投げたら偶然にも、今の私達にぴったりの物が目に入った。
私は思わず楽の袖を掴んで、そちらを指差した。
『楽!見てみて、あれだよ!デートっぽい!』
「え…あ、あれって…本気か?」