第59章 凄く綺麗ですね!
「ははっ、また会えて、すげぇ嬉しい。
でも、何でエリがここにいるんだ?」
『TRIGGERのプロデューサーさん…春人さんに、ここに来るように言われて』
「……へぇ、春人と知り合いなんだな」
『う、うん!まぁそんなところ』
突かれて痛いところは、笑って誤魔化す。楽も、それ以上は深く追求して来る事はなかった。
ほっと胸を撫で下ろし、すぐさま本題に入る。
『えっと、楽』
「ん?どうした?」
『私…今日は、前みたいにデートチケット的なのは持ってないんだけど。その…デ、デート、してくれますか?』
相手からは見えないよう、机の下で手をモジモジしながら言う。俯かせていた顔を、ゆっくり持ち上げて楽を見た。
彼は、強い歓喜の表情で こう返すのだ。
「当たり前だろ!しようぜ、デート。どこに行きたい?あんたが行きたい所 どこにでも連れて行くし、したい事なんだって させてやりたい。
あー どうしよう。俺、今すごいテンション上がってる」
『…良かった。私も、嬉しい。楽のそんな、楽しそうな顔が見られて』
勝算の方が高かったとはいえ、不安が無い訳ではなかった。もし、デートは出来ない。なんて言われたら どうしよう。そんな憂いは今、全部吹き飛んだ。
危惧がいっぺんに安堵に変わり、気が緩んでしまったのかもしれない。
私はついつい自然と、目の前のカップを持ち上げてしまった。
「………」
『……あ』
楽は、他人の飲み物に口を付けんとしている私を、驚きと不可解が入り混じった瞳で見つめた。