第58章 今日1日はお前に付き合うよ
「男が癒されるシチュエーションなんて、好きな子と一緒にいる時に決まってるでしょ!」
『……あの。姉鷺さんて、私とTRIGGERメンバーをどうしたいんですか』
前から思っていた。
彼は、私が女だとバレても一向に構わない!という言動を取る。社長と同じく、私がメンバーと恋愛関係にならない為に男装を勧めたのではないのか?
『貴方は何の為に、私にこんな格好をさせてるんです?もしもバレたら元も子もないでしょう』
「あら。あなたのそれは、アタシの趣味よ!雇用契約の時も言ったでしょ」
『あれ冗談じゃなかったんですね』
どうやら彼と社長とでは、思考の乖離があるらしかった。
「さっきアタシに、自分とTRIGGERメンバーをどうしたいのかって、聞いたわね」
『はい』
「あなた達に、アイドル界のテッペンを獲らせたい!ズバリこれね!」
『…いや、ズバリ!ではなくて…。私が聞きたいのは、そういう事じゃなくてですね』ありがたいけど
腰に手を当て、高々と宣言する姉鷺。私が白い目を向けた、その時。彼は続けて口を開く。
「で、それと同じくらい…天や楽や龍には、幸せになって欲しいとも願っているわ。
アイドルとしての栄光を掴むだけでなく、ただの1人の男としての 幸せを掴んで欲しいのよ」
『姉鷺さん…』
「アイドルだから。ファンの為だからって、本当の自分を偽る必要ないんだから!勿論、カメラの前は別だけど。
幸せになりたいって、願ってもいいのよ」
『私も、そう思い』
「3人だけじゃなくて、アンタもね」
姉鷺は、パチンと片目を瞑ると 部屋を後にしたのだった。