第57章 好きな人を追い求める権利すら
『なんで、また笑うの?怒るところでしょ』
「はは、ごめんね。いや、やっぱりエリと春人くんは、同じなんだなぁと思ったら。なんだか嬉しくなっちゃって」
『どっちも私なんだから、当たり前じゃない』
「うん。そうなんだけど。君は自分で気づいてるのかな。
エリってさ、自分を守る言葉を使わないんだ。自分を正当化する言葉は、決して。
さっき楽の話をした時もそう。自分は最低だ。間違っているのも自分の方なんだって、当たり前みたい言う。
今の質問の答えにしても、自分に都合良い嘘だってつけるだろうに。例えば、天が秘密にしようって言った。とかね」
『…どうして、私が嘘をついてないって 龍に分かるの?』
「それくらい分かるよ。もう2年も君を見てきたんだ。
とにかく俺は そんな君だからこそ、これからも一緒にいたいと思った。
沢山の傷を その背に隠して。全部の罪と罰を たった1人で引き受けて。
でもこれからは、1人じゃない。俺が、君と同じ道を行く。そして、力の限りで エリを守るよ」
強い光を その目にたたえ、私の手を掬い上げた彼は…。まるで、忠誠を誓う騎士のようだ。
しかし、彼が忠誠を誓ったのは 姫ではない。これから戦地へと赴く、戦士の前に忠義を立てたのだ。
これからは自分が、屈強な盾になって代わりに傷を負う。時には剣となって、立ちはだかる敵を斬ろう。
そして…私の為ならば、仲間を欺く事さえも厭わない。その覚悟が、彼の全身から伝わってくる。
『…ありがとう、龍。私は きっといつか、この恩を、貴方に返す』
TRIGGERを、日本一…いや。世界一のアイドルグループにすることで。