第8章 なんだか卑猥で良いね
チョコバナナを食べる天に向かって、私は良い笑顔で告げる。
『それを貴方が咥える様は、とても卑猥で素敵ですね』
「それはボクに喧嘩を売ってるって事でいい?」
はぁ。どうやら彼はこんな事も知らないらしい。仕方なく私は説明する。
『九条さん。美形がチョコバナナを食べている時には、この台詞を言わないと失礼にあたるんですよ?』
「なにその特殊なルール」
そして私達はその後も、チョコバナナを食べながら唐揚げを買い。唐揚げを食べながらフライドポテトを買い。フライドポテトを食べながらクレープを買った。
もう何も食べたくない。と天が言うので、仕方なく食べ歩きはそこで中断。
楽と龍之介の為に買っておいた食べ物も、そろそろ持ち切れなくなくなって来たところで。一度 彼らのいる控え室まで戻る事にした。
「おー、随分買ったな」
「こんなにありがとう!」
お金を払おうとする龍之介の申し出を断って、2人に買って来たばかりのお土産を渡す。
すると龍之介が、早速袋から取り出したのは たこ焼き。
それを見た天は、興味津々で言った。
「…たこ焼きから先に食べるんだ。ねぇ龍。それはやっぱり関西人に怒られるから?」
「え?よく分からないけど…熱いうちに食べた方が、良いと思って」関西人?
一方楽は、一番上にあったチョコバナナを手に取った。新聞を広げて 視線は下に落ちたまま。大きな口でパクついた。
「……楽。キミがそれを食べていると、なんだか卑猥で良いね」
龍之介がたこ焼きを吹き出した。
一瞬、楽も目を見開いたものの。すぐにキリっとONの顔に切り替える。そして前髪をかき上げて言うのだった。
「…ふ…。だろ?」
『さぁ九条さん。次行きますよ』
「え…まだ行くの?」
心底嫌そうな天の手を、再び引いて歩き出す。
「…なんだか、天が壊れていくような…」はは
「ん?良い事じゃねぇか」そうか、俺は卑猥か…