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引き金をひいたのは【アイナナ夢】

第57章 好きな人を追い求める権利すら




これで彼は、背負わなくてはならなくなった。
家族とも言える友人に、嘘を吐き通す事。優しい彼は、そのせいで どれくらいの心労を負う事になるのだろう。

しかし龍之介は、私の手を取ってしまった。
もう、後戻りは出来ない。


『ごめん…ごめん、龍。この手を、取らせてしまって、本当に…ごめ』

「こういう時は、手を取ってくれて ありがとう。って、言うんだよ」


朗らかな笑顔で、龍之介はそう告げた。
その後、彼は私に隣へ座るよう促した。確かに、いつまでも地べたに座っているのは不自然だ。


『…ありがとう。優しい貴方につけ込んで、ごめん』

「ううん。俺も納得した上だから。立派な共犯者だ」

『う、共犯者、か…なかなか刺さるね』

「ははっ。承知の上だろ?」

『違いないね』


その厳しい物言いは、龍之介が楽を想う気持ちが伝わってくるようだった。


「秘密の方は…頑張って口を噤むとして。
もう1つの方に、不安が残るんだよなぁ」

『……あぁ』


私が龍之介と交わした約束は2つ。
1つは、楽に私の秘密を話さない。もう1つは、恋をする自分をカメラの前に晒さない。

彼は今、後者の心配をしているのだろう。
それとも…好きな人を、追ってはいけない。という言葉を気にしているのだろうか?


『あのさ…さっきの話だけど。
私は、アイドルだって 恋をして良いと思う』

「えぇ!?だってさっき、権利は無いって」

『いやいや。私、権利は無いなんて言ってないから。
そもそも人を好きになって追い掛けるのに、権利なんて必要ないでしょ?勝手に好きになって、勝手に追い掛ける。それが恋なんだから』

「な、なんか、身も蓋もない言い方だね…」

『私が駄目だって言ってるのは、その姿をファンに見せる事。それをした時点で、アイドルはアイドルじゃなくなる。
さっき天の名前を出したのは、彼がそれを絶対にしないって信じてるから』

「…そっか。反対に楽は…」

『うん。きっと楽は…好きな人がいるってこと、隠し通す器用さが無いと思ったから。
仮に出来たとしても、本人はかなり辛いと思う』


正直、その状況に身を置いた楽を見なければ判断は出来ない。でも、不確定要素はやはり怖い。
竹を割ったような性格の楽だ。カメラの前で、好きな人にアタック中だ!などと言いかねない…

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