• テキストサイズ

引き金をひいたのは【アイナナ夢】

第57章 好きな人を追い求める権利すら




『3人の内 誰が欠けても、TRIGGERはTRIGGERでなくなってしまう。でも…
私は違う』

「っ、エリ!」

『もし龍が、楽に私の秘密を話すって言うのなら。
もしも龍が、恋をする自分をカメラの前に晒すって言うのなら。

私が、TRIGGERの前から消える』


つくづく、嫌になる。こんな卑怯な自分が。だって私が今している事は、脅迫に他ならない。

しかし、一種の賭けでもある。もしも彼が、私の存在よりも 自分の意志を貫き通す事を優先すれば…
私はTRIGGERの前から去らなければならない。

しかし、そうなったとしても TRIGGERは走り続ける。私が居なくなったところで、蜘蛛が足を一本失うだけ。3人という本体が存在している限り、蜘蛛は生き続けるのだ。


「分かった」

『それは…どういう意味の、分かった?』

「エリと一緒に、俺も墜ちる」

『!!』

「楽には、話さないって約束する」


彼は、へたり込んだ私を見て告げた。

龍之介は、もっと悩むと思った。自分を曲げる事と、私を失う事を、天秤に乗せて。
しかし彼は、驚くべき早さで私に結論を叩きつけたのだ。


「俺は、エリの中に…確かな覚悟を見た。

君は以前言ったよね。TRIGGERと一緒にいたいと、いくらでも頑張るから 見捨てないでって。涙を流して。
そんなふうにTRIGGERを愛している君が…

自分から、TRIGGERを捨ててみせるとまで言ったんだ。そう告げるのに、一体どれくらいの覚悟を必要とするのか、俺にも分かるよ」


龍之介は、だらしなく垂れ下がっていた私の手を取った。

自分の両手で 私の手を包み込んで、きゅっと力を込める。


「俺も 付き合う。それが君の選んだ道ならば」

/ 2933ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp