第8章 なんだか卑猥で良いね
「ねぇちょっと。本当にどういう事か説明してくれる?」
最初こそ抵抗していたが、校舎の外に出た辺りで もう諦めたように、素直に引きずられてくれている。
『遊びましょう。今日はとことん』
「は?」
せっかくこういう場にいて、しかも時間は盛大に余っているのだ。遊ばない手はない。
天に、思い切り息抜きをして欲しい。そして、その間くらいはアイドルである事を忘れて 青春を感じて欲しいのだ。
多分、そんな事を思うのは私の勝手なエゴだが。
『きっと、楽しいですよ』
「………」
私達は、チケット売り場の列へと並ぶ。
こういう場では、屋台などで直接 金銭を支払うのではなく、こういった金券を介してやり取りするのがお約束。
『九条さん、学生の時には無くて 今の私には有る物が何か。お分かりですか?』
「?さぁ…」
『それは…』
順番が回ってきたので、チケット売り場のテーブルに 一万円を二枚置いて言う。
『財力ですよ』
「わぁ汚い笑顔」
いきなり諭吉2人分ものチケットを購入する客は、まずいないのだろう。販売員の目が白黒していた。
『学生の時は、こういうお金の使い方は出来ませんでしたからね』
私は購入したばかりのチケットの束を見つめる。
「そんなに買って、使い切れるの?」
『…片っ端からまわるんですよ』
「あ、そう。じゃあ とりあえず何か食べる?」
どうやら付き合ってはくれる様子だ。
私は、そうですねぇ…と言いながら辺りを見回す。すると、フランクフルトの屋台が比較的空いているのが見て取れた。
『あれからにしましょう』
私達は早速、その屋台に並ぶ。