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引き金をひいたのは【アイナナ夢】

第56章 見てない!見てない見てないよ!




「あ…そうか、沖縄でも水着になりたくないって言ってたもんね。
なんだったかな…。えっと、すね毛?が、何か問題あるんだっけ?」

『今はすね毛どころの話ではないんですけどね!!』


無駄に記憶力が良い龍之介。とにかく、こちらへ来る事は諦めてくれたようだ。岩の向こうで、腰を下ろす気配がした。
ちゃぷ…と、体が浸かる水音が生々しい。

しかし、私は内心でガッツポーズをした。
よし。作戦通りだ!あとは平静を装いつつ、彼が湯から上がるのを待てば良い。

案の定、私を襲ってきた “ お約束 ” であったが、絶対に回避ルートを踏んで見せる!


「あー…気持ち良いね」

『そうですね』

「なんだか嬉しいよ。こうして春人くんと一緒に温泉に入れるのが。撮影の時は、3人だったから」

『この状況でも、一緒に入っていると思ってくれるんですね。でも…私も嬉しいですよ』

「ははっ。良かった」


私達は、大岩を挟んで会話をする。
変な感じだった。こんなふうに彼と私が、同じ湯に浸かっている状況が。
でも、嬉しいと言ったのは嘘ではない。


「こっちは岩湯なんだね。撮影した方の温泉とは、随分 雰囲気が違うなぁ」

『そう…ですね』


私は、龍之介の言葉に はっとした。

そもそも、どうして彼は堂々と女湯に入って来たのだろうか。入浴前 私は確かに、ここが女湯である証拠の、赤い暖簾を見た。

少し、探りを入れてみる。


『どっちの温泉も楽しめたのは、ラッキーでしたよね…』

「そうだね!女将さんが、夜の1時に男湯と女湯が入れ替わるって言ってただろ?
だから、次に入るのは1時過ぎてからにしようって、ずっと思ってたんだ」

『……イチ時…』

「うん。イチ時」

『…シチ時?』

「ううん。イチ時」


1(いち)時と7(しち)時を間違えると言う、ベタベタなボケをやってしまったらしい。
私がここで羽を伸ばしている間に、暖簾はしっかり架け替えられていたのか…

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