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引き金をひいたのは【アイナナ夢】

第55章 “ お約束 ” の においがプンプンしますな!




私とスタッフは、3人より一足先に現場にて待機していた。もう少ししたら彼らも、この池へとやって来る。
非現実的でさえある この光景に、カメラマンは意気揚々とカメラを回していた。

TRIGGERメンバーは、ここの下見等は一切していない。それは、私が初見のリアクションをカメラに収めたいと言ったからだった。
きっと、良い反応を見せてくれると思う。私は内心で楽しみに待っていた。


「なんて…言っていいか、分からないくらい綺麗だね。吸い込まれてしまいそう」

「あぁ…はっきり言って、怖いくらいだ。まるで 池の向こうに、もう1つ世界が広がってるみたいな」


天と楽は、黒、朱、橙、黄色が織り成す世界に、思わず息を飲んでいた。龍之介も、池に映った景色を見て口を開く。


「逆さ紅葉、って言うんだって。鏡のようになった水面に、逆さまに映るから。
ここにお邪魔するって聞いた時、調べたんだ。ここの旅館の名前は、この景色に由来して付けられたらしいよ」


逆さ紅葉。龍之介の口から出た言葉を、胸の中で繰り返す。
そうか…この光景は、そんなふうに言うのか。千は…その事を、果たして知っていたのだろうか。


そして、撮影は全て終了する。エンディングトークは、今日の昼のうちに撮ってある。これでもう、やり直す事はない。
スタッフ達は、まだ新幹線がある内に全て引き上げる手筈になっていた。

私とTRIGGERメンバーは、ここに残って宿泊だ。せっかくなら、星の付いた京都旅館を堪能したいとの三人の希望だった。

泊まり組4人は、スタッフを玄関先まで見送る。その後、自然と足は 逆さ紅葉の場所に向いていた。
メンバー達の隣で、私もまた 紅葉美に酔いしれる。


「キミ、これ見たの初めてじゃないでしょ」

『さすが、鋭いですね』

「そうか、春人くんは ここに来た事があるんだね。本当に綺麗な光景だ…。いくらでも見ていられる」

『同感です。むしろ、この景色を見て心の動かない人間とは、私は友達になりたくありません』

「はは、なんだそれ。
それより春人。前はこの景色を 誰と見たんだ?」


楽の質問に、彼が “ もう1つの世界みたい ” だと称した水面に視線を落として答える。


『この情景にも劣らないような…美しい人と』

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