第55章 “ お約束 ” の においがプンプンしますな!
彼らと出会ってすぐの頃は、裸を見たくらいで こんなにドキドキしなかったはずだ。何も感じなかった訳ではないが、せいぜい “ 眼福眼福。ラッキー ” 程度だったと思う。
何故なら3人は私にとって、ビジネスパートナー以外の何者でもなかったから。どれだけ格好良くて 良い男であっても、決して恋愛対象には成り得なかったからだ。
『…成り得な “ かった ” ?』
自分の中に産まれた違和感に、ついつい独りごちてしまう。その違和感はやがて、私の中で不穏となって膨れ上がる。
恋愛対象には 成り得なかった。
この言い方だと、まるで今は そうじゃないみたいだ。
まさか、私はTRIGGERを…自分の恋人にでもしようと思っているのか?
『あははは!』
「「「!?」」」ビク
あり得ない。あり得ない。
なんて恐ろしい、たられば話を思い浮かべているのだ私は!
「ねぇ、ちょっと…大丈夫?」
天は心配そうに、私を振り返った。
私達は、空き時間を利用して館内を散歩している。今は階段に差し掛かっており、私の少し前を天が歩いていた。
さらにその前を、楽と龍之介が行く。その2人も、私の急な笑い声に驚いて、顔を上げ こちらを見ている。
『え、えぇ…大丈』
階段に足を下ろそうとした瞬間。私の体は、前に大きく つんのめる。
「は?」
「なっ!」
「あ」
体が傾いていく私を見て、3人は驚きの表情を顔に貼り付ける。まさにデジャブ。この顔は、私が温泉に落ちた時にしていたそれと全く同じだった。