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引き金をひいたのは【アイナナ夢】

第54章 もう全部諦めて、僕に抱かれろよ




私達の前にずらりと並んでいた料理は、見事なまでに綺麗に無くなった。
腹八分目なんて言葉は知ったことかと言わんばかり。私の胃には9割は物が詰まっている事だろう。今すぐにでも浴衣の帯を緩めてしまいたい気持ちだ。

ちょっと待てよ。私は、こんなパンパンになったお腹を千に晒す事になるのか?それは勘弁願いたい。どうして後先考えずに爆食してしまったのか。食事の前の自分に忠告してやりたい。

そんな私が抱く後悔の念を、知ってか知らずか。千は言った。


「ふぅ、お腹もいっぱいになったところで…
食後の運動でも、どうかな?」

『え、えぇ!?まさかの、そ、そんな感じでスタート!?』

「??」


たしかに私達は、恋人同士ではない。だが、そんなムードの欠片も無い始まり方をするのか?!
いやまぁ、恋人でもない相手にムードを盛り上げてくれと望む、私の方がワガママなのかもしれない。
そう思い直した私は、ひとつ大きく頷いた。


「良かった。じゃあ、外に出るよ」

『外!?そ、外はマズイんじゃないかなぁ!?』

「え?でも」

『ほ、ほら!千はアイドルな訳だし、普通に室内でこそこそヤッた方が無難というか、そのーー』


しどろもどろ、左手と右手をあっちこっちにやる私。そんな私の手を、千は引いて歩き出した。


「大丈夫だよ。エリちゃんもきっと気に入るから。ほら、おいで」

『いや…うん。でも、うーん、気に入る…。気に入るかなぁ!?』あんまりハードなのはちょっと


私達は、旅館が貸し出してくれている下駄を持って、渡り廊下を行く。
すると。渡り廊下から、短い階段が降りている箇所があった。その数段の階段を下ると、千は下駄を履いた。

地面は土で、落ち葉が絨毯のように敷き詰められている。ふわふわとした感触を足の裏に感じながら、私達はそこからさらに少し歩いた。

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