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引き金をひいたのは【アイナナ夢】

第53章 隣にいるのは君が良いな




やがて船は、流れの穏やかな場所に出る。先ほどまでの激流が嘘のように凪いでいる。
左右には、高い岩壁が聳え立っていた。

漕ぎ手の人力で前へ進み、舵取りが船を端へ寄せる。高い壁が、近くで見ることによって より高く感じられた。


「今日は、せっかくRe:valeの千さんが来てくれたってことで、特別な場所にご案内しますよ!」


どうやらこの場所は、一般の観光客を案内するコースからは外れているらしかった。
私は、どうりで。と思った。上手く言い表せないが、ここには神聖な何かを感じる。地球から置き忘れられた場所のような、人が簡単に踏み入ってはいけない雰囲気に満ち満ちているのだ。

船頭は、岩壁の上の方を指差して言う。そこはよく見ると、小さな穴が空いている。そして、チョロチョロと水が流れ出している。
その水は見るからに澄んでいて綺麗だった。湧き水であろうか?


「この場所は、この船でしか来る事を許されていません。そして、あそこから流れる湧き水は、毎年 天皇陛下へ献上しているんですよ。
お上が御茶会なんかをやる時に、使われる特別な水なんです」


そう言って船頭は、船から身を乗り出す。そして手にした紙コップで、湧き水を受け止める。

どうぞ。と、コップを差し出された千。受け取って、ゆっくりと中身を一口飲み下した。

私を含め、その他の3人も、千の感想を待っていた。


「…そうね…、だいぶと、冷たい水。かな?
喉が渇いてる時に飲んだら、すごく美味しいと思う」

「……ははっ!!あははは!」


千なりの大真面目な感想に、船頭は腹を抱えて笑った。


「いやぁ、トップアイドルのRe:valeて聞いてて、どんな気取ったコメントくれはるんやろ思てたら…お前さん 面白いな!
テレビで見てたら、もっとクールそうに見えんのに」

「気に入ってもらえたなら嬉しいよ。貴重な場所に連れて来てくれて、ありがとう。
あ、良かったら僕のサインいる?書くよ。気合い入れて。今日のお礼にね」


この船頭が、Re:vale千の虜になったのは言うまでもない。

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