第53章 隣にいるのは君が良いな
「そういえばこの間 僕達、SHISEIGOのCMに出たんだよ。
え?自慢?ふふ、違うよ。そうじゃなくて。その時に先方から、ご厚意で 美顔器?貰ったんだけど…。なんか、ミストとか出る奴。
でもそういうのって、男の僕は使わないし。誰か必要としてる人がいるなら貰って欲しいなって思ってるんだけどね。
…え、ほんとに? そんなつもりじゃなかったけど…でもそういう事なら、ありがたくお借りしようかな。ふふ。分かった。じゃあ “ ブツ ” は、帰りに彼に持たせるよ。
うん、こちらこそ。じゃあ、もう一度代わるね」
千は、満足そうな笑みを浮かべていた。私は、こちらに差し出された携帯をゆっくりと耳に当てる。
『……もしも』
《風邪、早く治るといいわねぇ!天の事なら、何も心配いらないわ!全部この姉鷺さんに任せなさい!
事務所の方にも、アタシが連絡しておいてあげるから!あんたは今日1日、しっかりと休みなさい!》
『他に何か言う事はありますか』
《美顔器、12万するんだから丁重に持ち帰ってくるのよ》
『……御意に』
そんなこんなで、私は美顔器(最新型のSHISEIGO製12万円也)と引き換えに、千のお供をすることと相成ったのであった。
「君は、優しい先輩の元で働いてるんだな…」
『私、今の会話 一部始終聞いてましたよ?』
本当に優しい先輩は、美顔器と引き換えに 後輩の不正を見逃したりはしないと思う。